嘆かわかしい決定
《リード》
民主党が節を曲げて水俣関連の特別措置法が国会を通過した。圧倒的多数であった。実に嘆かわしい。
《本文》
日本はかつて「大東亜共栄圏」の理想を掲げ軍隊をアジアに派遣した。それは歓迎されたであろうか。その看板の理想は行動の本質を的確に表現していたであろうか。「欧米の搾取からアジアの人々を解放する」という夢を信じた人もいたであろうが、現地の人々はむしろ新たな支配者の登場を苦々しく受けとめていたのではなかったか。そう、「大東亜共栄圏」には日本のエゴが丸見えだった。
今国会で重要とされる法案のうちの一つが通った。与党と民主党の間で修正協議がまとまった水俣病未認定患者を新たに救済する特別措置法案である。
加害企業である「チッソ」は早速この法案の成立を歓迎するコメントを発した。「水俣病問題の終結」に期待を賭ける正直な(?)内容だった。
協議がまとまったのは民主党が当初反対としていた「チッソ分社化」を認める姿勢に変わったからだ。分社化は被害を補償する会社と好調事業(液晶製造など)を担う会社とに現「チッソ」を分割し、補償会社の原資は事業会社の株の売却から得る予定だから、その資金が尽きれば補償会社の継続は不可能になる。国とチッソの「逃亡」を手助けするような方針を民主党がなぜ認めたのか、わかりにくい決定である。
政権の座につくことが確実視される中で、水俣病問題を持ち越したくなかったのではないか。つまり民主党も自民党同様、「逃亡」を目論んでいるのではないか。
水俣病は今もってどこまで広がっているか判然としていない。その原因のひとつは、水俣病についての包括的で綿密な調査が今もって行われていないからだ。自民党政権はチッソと連携し水俣病問題に早くフタをする―—水俣病患者数をできるだけ増やさない(つまり本当は患者でもそれを認めない)という方針で水俣病に臨んで来た。2004年最高裁判決が下るまでの約50年にわたって、国はその責任を認めて来なかった。そればかりかその判決で欠陥を指摘された不当に厳しい認定基準についてもその改訂を拒み続けている。一方で訴訟を取り下げることを条件にして「新保健手帳」を交付するという「懐柔策」を弄して相変わらず逃げ切りを画策している。逃亡することばかり考えて来た連中に、水俣病を新たに発掘しかねないような調査をせよと迫っても意味がないのであろう。だが、それが「国」や「県」のやり方として正当だとは到底思えない。
看板通り「高齢化する被害者たちを一刻も早く救いたい」というのが「ホンネ」なら、速やかに認定基準を妥当なものに変えて、どんどん認定患者を増やせばいいのだ。それをせずにカネをけちったみみっちい妥協案を見せて「これが最後だからね」なんて言い草は私たちの代表たる者に言ってほしくない。
「心神喪失者等医療観察法」という問題点だらけの法律が2005年に施行された。私は反対なのでこれを使う事には抵抗があるが、その問題点を暴く意味からも適用してみるといいかもしれない。裁判所が決めたことに従わない公務員は、冷静に考えて「心神喪失」状態にあると推定できるからだ。法に従って当該の公務員をリストアップした上で、裁判官と精神科医で「入院/通院」等の措置を決める手続きに入るというのはどうか。「いやがらせ」としては効果がありそうだ。
もうひとつ。法廷を軽んじた罪を追究できるかもしれない。「監置(かんち)」という、法廷等の秩序を維持し、裁判の威信を保持することを目的とする監置場への留置という措置が裁判所を侮辱した者にはくだされる。この決定には裁判を要しない。いわば「現行犯」だからである。水俣病の認定基準を巡っては確信的不服従の者がいるようだから、大臣であろうがなんだろうが、そいつを「監置」してしまえばよい。従うまで何度でもだ。
最高裁判所の決定は無視され、「サイテー」の扱いを受けたのだ。どこかの国の最高裁は軍を直接動かして大統領を追放したとか。「三権分立」は侵してはならないから、それは論外としても、コケにされて、黙しているというのは認めることになろう。
判事たちには最高裁判決を実質的になし崩しにする法案に異議を唱える権利がある。チッソに味方し、力のない患者たちの頬を薄っぺらい札束で叩き、一部の患者は切り捨てようとするこの法案を黙って通してはならなかった。裁判所の名誉がかかっていたのだから。
実は裁判所だけではない。私たち日本人の名誉もかかっている。水俣は突出してはいるが、私たちが作ってきた時代の象徴でもある。私たちが自分自身とどう付き合うのか、自分のしたことにどう落とし前をつけるのかが問われていたからだ。美名に隠れて誤摩化すようなやり方は不誠実で恥ずかしい。
……まったくサイテーだ。
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コメント
動物植物にとっては 人間がミナマタなのだ
みんなまたまた
投稿: 香川 | 2009年8月 3日 (月) 17時16分